南シナ海での中国の違法行為は
国際秩序のルールを壊したのか?
中国を支持した鳩山由紀夫は今…
中国専門ジャーナリスト福島香織が語る「チャイナリスク2017 衝撃の真実」
余談だが、日本の鳩山由紀夫[一九四七~/第九三代内閣総理大臣、民主党元代表。東アジア共同体研究所理事長]元首相は七月一六日に北京・清華大学で行われた「平和国際フォーラム」席上で「中国やフィリピンに圧力をかけて仲裁判断を受け入れるよう促すべきではない」と発言し、仲裁裁判所の判決に対し不支持の態度を示している。
現地メディアの報道によると、この席で鳩山は「東アジア和平理事会」の創立を提言し、南シナ海については「米国の関与が深い」「米国がいつも仮想敵国をつくり出し、国家を動員して軍事と産業の結合を進める策略をしばしば使い、日本もこうした策略を使っている」
「中国が釣魚島の主権を主張することはなんら問題ない。メディアが中国脅威論をあおっている」「中国が軍の兵力三〇万人の削減を宣言したことは平和に向かう善意の表れ」などとかなり中国に向かってリップサービスしたようだ。
つまり中国側は、南シナ海判決については、中国側を支持する側の国が多く、日本の平和主義的な元首相も判決がアンフェアだと見ていることなどを根拠に、正義は中国にあり、国際仲裁裁判所の判決は米国の陰謀であり、国際常識・国際秩序のルールメーカーはこれからは中国であるとの立場を国内で喧伝しているわけである。これは従来の国連主導、米国主導の国際秩序、国際常識に対するある種の〝宣戦布告〞ともいえる。
※福島香織著新刊『赤い帝国・中国が滅びる日』発売記念、緊急集中連載。
著者略歴
福島香織(ふくしま・かおり)
1967年、奈良県生まれ。大阪大学文学部卒業後、産経新聞社大阪本社に入社。1998年上海・復旦大学に1年間語学留学。2001年に香港支局長、2002年春より2008年秋まで中国総局特派員として北京に駐在。2009年11月末に退社後、フリー記者として取材、執筆を開始する。テーマは「中国という国の内幕の解剖」。社会、文化、政治、経済など多角的な取材を通じて〝近くて遠い国の大国〟との付き合い方を考える。日経ビジネスオンラインで中国新聞趣聞~チャイナ・ゴシップス、月刊「Hanada」誌上で「現代中国残酷物語」を連載している。TBSラジオ「荒川強啓 デイ・キャッチ!」水曜ニュースクリップにレギュラー出演中。著書に『潜入ルポ!中国の女』、『中国「反日デモ」の深層』、『現代中国悪女列伝』、『本当は日本が大好きな中国人』、『権力闘争がわかれば中国がわかる』など。共著も多数。
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